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お知らせ2022/07/25

【連載企画】技能五輪世界一への道(第3回)「多様な競技内容と通常業務の関連性」

以前、新聞記者さんからのインタビュー取材で「技能五輪の成果はどのように業務に生かされますか?」と質問を受けた甲斐田光は一瞬、答えに詰まり、苦笑しながら私(広報担当)に助けを求める視線を送ってきました。そこで、すかさずインタビュアーに対して「残念ながら、競技内容と通常業務は必ずしも一致しないんです」と正直に伝えました。

というのも、技能五輪(印刷部門)の競技項目は多岐にわたります。もちろん、通常業務で行っているオフセット印刷工程も含まれますが、通常業務では行わないものがほとんど。オフセット印刷関連の競技でも通常は主に厚紙(パッケージ用)を使用するのに対して競技では薄紙であったり、油性インキとUVインキの違いなどもあります。

こうした通常業務以外の競技項目については、社内に設備があれば社内でトレーニングを行うことができますが、社内にはない設備の場合は、他社に出向いて機械をお借りしてトレーニングを行うこともあります。

現在、社内で取り組んでいるのが主にCCM(コンピュータ・カラー・マッチング)やオフセット印刷シュミレーターです。朝、通常業務が始まる前の30分を利用して、このCCMのトレーニングを行っています。

CCMは端的に言えば特色のインキ練りのこと。オフセット印刷では通常、カラーを印刷する際はプロセスカラーのCMYKインキで印刷します。しかしプロセスカラーでは表現が難しい色を指定いただくことも多々あります。金や銀や蛍光色のほか、彩度が高い色はプロセスカラーで再現することは難しいため、このCCMを使ってプロセスカラーにはない特色を作り出す必要があるのです。

実際には、ヘラを使って必要な複数のインキをグラム単位で用意。あらかじめ定められた配合比率を目安に、インキを調合していきます。練ったインキは紙につけて色見本にあわせていきます。

当社の3つの印刷工場にはそれぞれCCM設備とCCM専任の担当者を配備しており、オフセット工場CCMを担当するベテラン社員は、“色の魔術師”としてニュース番組でも取り上げられるほどの職人技を持っています。甲斐田はオフセット印刷機のオペレーターであるため、通常業務でCCMを行うことはほぼありません。そのため“色の魔術師”の指導のもとに、CCMのスキルアップに励んでいます。一応、国内大会の競技種目にもなっていたので、精度はもちろんのことスピード向上にも注力しています。

このCCMに関しては、通常業務ではほぼ行わないものの、仕事の幅を広げるという意味ではスキルとして身に着けておくにこしたことはありません。ひょっとしたら、この先、業務上、役に立つ可能性もあります。

一方で、もう一つのオフセット印刷シュミレーターに関しては、もともと社内では備わっていないシステムで、今回の技能五輪世界大会のために導入した経緯があるため全く未知の領域。その証拠に「正直とても難しい」と漏らすほど。世界大会で勝敗を左右するのは、こうしたシュミレーターのように通常業務では触れることのない競技項目。次回はシュミレーターなど世界大会ならではの競技のトレーニングについて紹介します。(つづく)