株式会社丸信

三方よし通信

三方よし通信

【社長コラム】反スパイ法改正

中国でスパイ行為に関わったとして日本の大手製薬メーカーの50代の社員さんが、国家安全当局に逮捕され、1年半にわたって拘束状態にありますが、直近で中国の検察に起訴されたと報道がありました。禁固刑などで収監され、さらに長期化する事は避けられない模様です。どのような行為がスパイ行為と認定されたのか等はまったく不明ながら、ご本人の恐怖や絶望感、ご家族のご心労は如何ばかりかと深い同情を禁じえません。これは日本政府が弱腰だからだと思っていましたが、決してそうではないようです。米国やEUの企業でも同様の拘束が多発しているのです。
2023年7月に反スパイ法が改正され、スパイ行為の対象が「国家の安全と利益に関わる文書、データ、資料、物品」に拡大され、明確な基準が不透明なまま運用されています。このリスクを考慮して当社のお取引先でも中国への出張を控える企業が出てきています。
これに加え、驚くことにビジネス上のトラブルが理由で出国禁止措置を受けることがあるようです。日経ビジネス2024年6月10日号(グローバルインテリジェンス記事)によると、ビジネスマンが帰国しようと空港へ行くと公安に突然呼び止められ、取り調べを受け、そのまま拘束される。後から取引先である中国企業が裁判所に訴えて、出国禁止令を出されていたと判明する。恐怖でしかありません。

このような出国禁止措置は中国の取引先の要求に応じた場合のみに解除されるようで、裁判で争っても勝訴は期待できないようです。言わば人質です。明らかになっているだけで欧米企業で過去10年で100件以上も事例があるようです。記事では起訴を起こされている、あるいはその予兆や疑いがある。ビジネス上のトラブルを抱えている場合には出張を控えるべきだと明言しています。
日本のGDPの2割強が輸出であり、中国への輸出額は近年減少していますが、それでも隣国の10億の人口を超える巨大マーケットを無視する訳には行かず、中国は香港を加えると実質的にNo1の輸出相手国になります。高杉良の小説「エクセレントカンパニー 燃ゆるとき」の中で日本の中堅食品メーカー(東洋水産と思われる)がアメリカ市場に進出する際に労務問題やセクハラ訴訟など様々な困難を乗り越えて、成功するまでの物語が画かれていますが、さらにハードな価値観の異なる全体主義の市場にどう対処するのか、難しい舵取りになると思われます。

内需100%企業の私が心配することではないですが…

平木 洋二