三方よし通信

三方よし通信

【社長コラム】海の向こうで見た「日本の現在地」

先日、ラベル印刷の最新技術が集う海外の展示会と、現地の先進的な印刷会社の視察のため、イタリア、スペインへ飛ぶ機会をいただきました。期待に胸を膨らませて向かった彼の地で私が見たものは、日本の豊かさや立ち位置について、改めて深く考えさせられる現実でした。

視察で訪れたベネチアのラベル印刷会社は、全ての印刷をデジタル印刷機で行っていました。驚いたのはその生産性です。なんと、従業員一人当たりの売上高が、日本の同業の約3倍にものぼるというのです。オフィスや工場は洗練され、働く人々の表情にもどこか余裕が感じられます。高い売価、効率化された生産体制が、利益を生み、それが従業員に還元され、豊かな生活に繋がっている。この「豊かさの違い」を目の当たりにし、私はしばし言葉を失いました。価格競争に汲々としている我が国とは大きな違いです。

メインの目的であったラベルビジネスの展示会も、大変な活況を呈していました。会場には世界中から最新のデジタル印刷機や関連技術が集結し、熱気にあふれています。世界ではデジタル印刷へのシフトが、私たちの想像をはるかに超えるスピードで進んでいる。この大きな潮流に、日本は果たしてついていけているのだろうか。そんな思いが頭をよぎりました。

しかし、今回の出張で感じたのは、ビジネスの明るい未来だけではありません。現地に到着してすぐ、ツアーガイドの方から「スリやひったくり、強盗が多発しているので、絶対に気を抜かないでください」と、滞在中、何度も何度も強く念を押されました。かつては安全だったEUの先進国で、なぜここまで治安が悪化してしまったのか。大量の移民の受け入れ、経済的な格差や社会の歪みが表面化したものかも知れません。日本に戻って、これほどホッとしたことはありません。

そして、これら全ての根底にあると感じたのが、皆様も日々実感されているであろう「円安」です。何を買うにも、何を食べるにも、日本円に換算すると驚くほどの金額になります。ペットボトルの水は日本の倍、缶ビールは2倍~3倍という感覚です。かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代を知る者として、日本の購買力がここまで低下してしまった現実は、正直なところショックでした。輸出が長期間停滞していることも円安の一因かと思います。

今回の視察は、技術的な学びはもちろんのこと、世界経済の中での「日本の現在地」を痛感する貴重な機会となりました。デジタル化の波、生産性の向上、そして安全という価値。私たちが当たり前だと思ってきたものが、決してそうではない現実。この経験から得た危機感をバネに、私たち自身が変わり、お客様に新たな価値を提供していかなければならない。そんな決意を胸に、帰国の途につきました。