三方よし通信

三方よし通信

値決めは経営

立春を過ぎ、暦の上では春の足音が聞こえ始めたものの、経営環境においては依然として厳しい寒風が吹いております。原材料費やエネルギーコストの高騰が常態化する2026年、日々現場の舵取りに奔走されているお客様におかれましては、心より敬意を表します。

「値決めは経営」という重い言葉

京セラの創業者であり、経営の神様と称された故・稲盛和夫名誉会長は「値決めは経営である」という言葉を遺されました。 「お客様が喜んで買ってくださり、かつ企業も潤う。その交差点となる一点を射抜くのが経営者の最大の仕事である」という意味だと理解しました。

しかし、この「一点」を見定めるのは、並大抵のことではありません。特に今のような物価高の局面では、「値上げをお願いすればお客様が離れてしまうのではないか」という恐怖が常に付きまといます。私も一人の経営者として、その苦悩は痛いほど分かります。

「勘と経験」の限界と、M&Aで見えた現実

実は、弊社では現在、外部のコンサルタントを招き、印刷部門の原価計算のさらなる精緻化に取り組んでいます。これによって利益が出ていたはずの工程が赤字だと分かったり、段取り替え時間が掛かり過ぎていることが改めて表面化したり、気づきの連続です。過去に同業者をM&A(合併・買収)させていただいた際、痛感した苦い経験もあります。

お引き受けした企業は、素晴らしい技術をお持ちでした。しかし、その実態を紐解いてみると、原価計算が驚くほど「杜撰(ずさん)」だったのです。「これくらいで利益が出るはずだ」という、長年の勘や経験に頼ったどんぶり勘定の結果、気づかないうちに赤字受注が積み重なり、未来への投資体力を奪われていました。

「原価が見えていない」ということは、霧の中で全速力で走るようなものです。これでは、適切な「値決め」などできるはずもありません。

「マシンコスト」と「マンコスト」を計測する

お客様の業界におかれましても、原材料費の変動には敏感ですが、「マシンコスト(機械の稼働コスト)」や「マンコスト(人の労働コスト)」の算出が、意外な盲点になっているという事は無いでしょうか。

例えば、ある製品を一つ作るのに、機械の減価償却費、電気代やメンテナンス費用はいくらかかっているか。包装や検品にかかる社員の「1分」は、金額に換算するといくらか。これらを「見える化」すると、実は利益が出ていなかった、あるいはもっと効率化できるポイントが見つかるといったことが分かるかも知れません。

弊社もシールや紙器の製造現場において、作業記録を取りながら、実際の原価を可視化する努力を続けています。

自社のコストを精緻に把握していれば、お客様に対しても「これだけのコストがかかっています。だから、この価格が適正なのです」と、自信を持って、誠実にご説明することができます。これこそが、信頼に基づいた「攻めの値上げ」であり、ひいては会社を守り、社員を守り、お客様に高品質な商品を届け続けるための「最後の砦」となるのだと思う次第です。

誠に恐縮ながら、シールや紙器の業界でも今春には原紙等の値上げが予定されており、同業者さんも値上げをご提示されるものと推測します。できるだけその影響を和らげるべく仕入先様とも交渉し、自社の自助努力も加え値上げ幅の抑制に務めた上で価格改定をお願いせざるを得ないと思います。

単純な価格改定を避け、仕様・スペックの変更やご発注数量の変更などを加味した提案をさせて頂く所存です。ご理解とご協力を伏してお願い申し上げます。

株式会社 丸信

代表取締役 平木洋二