株式会社丸信

三方よし通信

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【印刷コラム】活版印刷とは?

先日、「凸版印刷と活版印刷って同じ意味ですよね?」という質問を受けましたが、「比較するグループが違うから同じ意味ではないよ」と返事しました。活版印刷は活字を並べ替えて印刷する印刷の形式で、版の形式は凸版です。凸版印刷は版の凸部分にインキを乗せて印刷する印刷方法全般を指します。

言うならば、「野球とバットは同じ意味」とか「日本と福岡って同じ意味ですか?」みたいな質問です。「野球」はスポーツの競技名で「バット」は野球で使用する道具の一つです。「日本」は国名で「福岡」は県や都市の名前なので同じ意味の「イコール」ではなく「含まれる」になります。

活版について詳しく説明しましょう。活版は、漢字やアルファベット、数字や点の単体文字もしくは単語で作られた活字の版、活版があり、その組み合わせて印刷版を作り、活版を組版したものを版として印刷していく方法です。今では博物館とかでしか見ることができない印刷方式です(ヨーロッパではワイン用のブドウ搾り器に活版をセットして聖書を印刷したとのこと)。

木材を削って版画のように印刷する方法が歴史的には古いのですが、その後、活字を組み合わせて、経典や聖書などの出版物を作る技術として活版は生まれました。毎回、木を彫るより、活字を事前に作っておいて並び変える方が早いという印刷技術革新です。漢字圏では活字の種類が膨大ですが、ヨーロッパでは、アルファベットの種類が限られるため、活版印刷に適した環境でした。日本でも江戸時代オランダ語の本は活版印刷で印刷されていたようです。

アルファベットはすべて裏文字で、活字の凸版である【J 】を1つ【A】を2 つ【P】を1つ【N】を1つ準備して組み版して【JAPAN】の順番に並べてインクを付けて印刷する感じです。

その後、活版を使った印刷としてはタイプライターがあります。活版を並べ替えるのではなく、紙の位置と版の位置を調整して順番に活字を印刷する機械です。現在、弊社にも活版印刷機が1台あります。しかし、活字を組み替える版組の作業は行っておらず、最初からデザイン通り文字やイラストが並んでいる樹脂凸版を使って印刷しています。弊社では昔ながらの活版用の印刷機で印刷したものを便宜上活版印刷と呼んでいます。

文字の周りに輪郭が出たり、かすれたり、文字位置がズレたりと欠点はある機械ですが、それを昔ながらの印刷物の味として楽しんで頂けるお客様には大変良い機械です。色んな技術革新の上で現在の印刷は出来ています。1000年以上の時を掛けて印刷を発展させてきた偉大な先輩方に感謝です。