株式会社丸信

三方よし通信

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【印刷コラム】シールの浮き出しエンボス

先日、デザイナーからこんな質問を受けました。

浮き出しエンボスは箔押し機を使って行います。銅版を凹版で作り上側にセット、下にゴムのように固めのスポンジをセットします。圧を掛けると凹んだ部分だけスポンジに押されて紙が入ってきます。

箔版の凹んでいない部分はスポンジの方が潰れます。このスポンジは自然な形で凸版の役割を果たすために、エンボス部分の紙の破れ等に効果があります。紙自体に凹凸がある場合は、スポンジが紙の凹凸の影響を受けるため、凸版と凹版を作成して挟みこんでエンボスを作ります。

また、エンボスの出方は紙によっても違います。ホイル紙は表面にホイル層がある為、エンボスが入りやすく、紙はエンボス後、若干戻ります。そしてユポなどの合成紙は戻りが大きいのでエンボスには向きません。

そこで、デザイナーに使用する紙について質問したところ「ホイル紙です」との回答。ホイル紙ならエンボスは残りやすいので、一安心。では、ホイル紙でどの細さまで出るのか。

紙の厚みはおおよそ0.15mm。予測では紙の厚みの4倍(約6mm)あれば浮き出しやすいと思います。凹凸版を作成する場合は凹版と凸版の間を0.2mmほど取ります。凸版は樹脂版で作成し0.5mmほどの太さはあった方が良いので凹版は0.9mm以上の太さが必要ということになります。箔版屋さんは1mm以上と言っていました。

しかし、今回の質問はどのくらいの細さまで行けるのかです。箔押しの作業者は過去に苦労したサンプルは取っていることが多いので、エンボスで過去一番細い製品を取っていないか聞きました。

すると、エンボスに関しては一冊のノートに過去の仕事をまとめていました(素晴らしい!!)。一つ一つのエンボスを見るとエンボスには三つの段階があることが判りました。

①紙に圧が掛ることで凹部分に出来たエンボス
0.3mmの細い線は、裏面に押した跡がないが表にはうっすらと柄が出ています。これは、紙自体が版により圧縮されて、版の凹部分だけ圧が掛らない状態のため出来たわずかな凹エンボスです。手でさわっても殆ど段差はありませんが、柄としてはうっすらと確認できます。

②裏から押す力の影響はあるが、エンボスの凹版の底部分に紙が届かないエンボス
0.5mmの線は裏面に押した跡がかすかにできています。段差もありますがエンボスの高さは低いです。これは凹みの幅が小さい為に、スポンジで押しても、エンボス凹版の底に紙が届かない状態と考えられます。

③エンボスの凹版の深さ0.5mmに到達しているエンボス
圧縮の戻りが発生するので高さ0.5mmにはならないがしっかりとしたエンボスになっています。幅は1mm以上は必要で巾が広い方が安定しています。

今回、調べるうちに面白い気付きがありました。同じ箔版で上の①~③が並行して発生するんです。使いようによっては線の太さを変えることで3段階のエンボスを表現することが可能です。今まで意図して作成したものはないですが意図して作成すれば表現の幅が広がるなと思いました。

デザイナーには、「出したいエンボスの高さによって、線の太さの最小は決まる」というのをノートを見ながら説明ました。面白い気付きのきっかけになったデザイナーと、ノートにエンボスのサンプルを取ってくれていたオペレーターに感謝です。