株式会社丸信

三方よし通信

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【印刷コラム】乾燥すると紙も喉が渇く!?冬に注意したいドライダウン

印刷には、「UV印刷」(紫外線でインキを硬化させる)と「油性印刷」(酸化重合で水分がなくなり乾燥する)という2種類の方法があり、それぞれ利点と欠点を持っています。ドライダウンとは、「油性印刷」で、和紙など(表面塗装のない水分を吸いやすい紙)の印刷時に起る現象です。

Tシャツ等で汗をかくとその部分だけ色が濃く黒っぽくなります。また、食事の際、油分を多く含む物が付くとその黒ずみが取れません。同じ理屈でインキが油性だと、少しずつ紙に浸透しながら乾燥していくので、段々と黒ずみながら、かつ表面のインキは紙に吸収されるので色が薄くなっていきます。これがドライダウン(乾燥により色が落ちる現象)です。

ドライダウンの難しい所は、「印刷時点の見た目」と「翌日の見た目」で違う色になることです。よく印刷現場の人から「どのように合わせれば良いですか?」と言う質問を受けます。私はゴルフに例えて『プロでも至近距離から外してしまうこともある、パットみたいな感覚やね』と答えます。

真っ直ぐ打っても入らないと思われる時、傾斜をよく観察して、右に曲がる、左に曲がる、強めに打つ、弱めに打つを予測します。印刷時も、時間が経つとどう変化するかを予測し、暗くなるから少し明るめに、色の濃度が落ちるから濃度を高めに、という感覚で印刷します。結果が翌日にならないと判らない上に、前日と同条件でも、毎回結果が異なることが難点です(T_T)。

営業の新人さんからの「ドライダウンの説明をどうしたらいいですか?」という質問には、「丸信の色見本のミラコートと上質を比較して」と言います。上質紙でも、印刷時はミラコートに印刷したような色味になることを話すと、一様に驚きが返ってきます。

リピート時は初回にドライダウンしにくい紙(コート紙やミラコート紙)などで刷ったものを保管しておき、それを参考にしたり、ルーペでインキの浸み具合を確認したりすることで、同じにはならないにしても近づくように印刷します。新版の時は、電子レンジを使い色の変化の傾向をみたりして予測精度を上げています。

和紙や上質紙などの場合は、ドライダウンが起きないUV印刷(インキを紙が吸う前に紫外線で硬化させる)の方が色は安定しますが、紙に対し浸透させずに硬化させるのでインキのツヤ感がでます。和紙にインクを馴染ませたい場合は、油性印刷の方が好ましいですが、ドライダウンによりロットごとに色目が変わります。

お客様の要望によりますが、どちらにも一長一短があります。ドライダウンは、色の判断が難しい印刷現象の一つですが、より精度が上がるように研究を続けたいと思います。

(品質管理部長・平木)

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